深夜帯まで開く本格和食という選択肢
営業時間は19:00から翌朝5:00、ラストオーダーは4:00。福井市順化2丁目に構えるはちまんは、深夜でも本格的な和食を味わえる数少ない一軒として、仕事終わりや二次会後の利用者に重宝されている。仁愛女子高校駅から徒歩約9分、福井城址や柴田神社にも近い順化エリアに位置し、公共交通でも車でも立ち寄りやすい。「この時間にこの質の和食が食べられる店は他にない」という声が目立つ。
個人的には、深夜営業と聞いて想像する店の雰囲気とはまるで違う落ち着きが印象的だった。やわらかな照明に木の素材感が映える店内は席数を絞った設計で、カウンターに座れば料理人の手元がすぐそこに見える。一人で静かに杯を傾ける客もいれば、記念日らしいペアの姿もあり、時間帯を問わず客層に幅がある。深夜の繁華街にいることを忘れるような空気感が、リピーターを生んでいるのだろう。
毎朝の市場仕入れから始まる一日
はちまんの料理は、その日の朝に市場で仕入れた素材から組み立てられる。地元の港に揚がった魚介を料理人自身の目で確かめ、状態の良いものだけを選んで持ち帰る。仕入れの段階で調理法の方向性が決まるため、おしながきは日によって微妙に異なる。出汁の引き方や仕込みの工程を含め、すべてが自家製で賄われている。
鍋コースは梅5,500円から松9,900円まで3段階、牛しゃぶ3,850円・豚しゃぶ2,750円という価格帯も設定されており、予算に応じて選びやすい。寿司やお造り、天ぷら、焼き物、煮物と品数は広く、コース仕立てで会食に使う人もいれば、単品を数皿頼んで軽く済ませる人もいる。常連客の中には「季節ごとにメニューが変わるから飽きない」と話す方も少なくない。この日替わりの変化が、通う動機になっているようだ。
居酒屋の距離感と和食店の仕事が同居する店
はちまんを一言で表すのは難しい。形式ばった和食店とも違うし、にぎやかな居酒屋とも違う。料理の仕立てや素材への向き合い方は完全に和食の仕事でありながら、客との距離感は居酒屋のそれに近い。好みの一品を気ままに注文しても、コースで通しても、どちらにも対応する懐の広さがある。
ふらりと一人で入った深夜に、目の前で丁寧に引かれた出汁の香りが立ち上る——そんな場面を想像してほしい。家庭では再現しにくい手間が一皿ごとに詰まっているのに、肩肘張らずに食べられる。「構えて行く店ではなく、気がつくとまた来ている店」と表現する利用者の感覚は的を射ている。
北陸の食材を軸にした季節ごとの構成
福井の海と山がもたらす食材は、季節によって顔ぶれが大きく入れ替わる。はちまんではその移り変わりをそのまま料理に反映させており、春から冬まで同じ品書きが続くことはまずない。旬の素材が持つ味を引き出すために、調理法も仕入れのたびに判断される。固定のレシピに当てはめるのではなく、素材の状態に合わせて仕上げを変えるやり方だ。
冬場の鍋コースを目当てに訪れるリピーターは多く、梅・竹・松の3段階から選べる構成が好評だという。牛しゃぶや豚しゃぶも用意されていて、鍋だけで複数回通う人もいると聞く。四季を通じてメニューが刷新されるため、前回と同じ料理に出会うほうが珍しい。そのつど異なる一皿が出てくることを楽しみにしている常連も多いようだ。

